数年前、ある日の月夜の光が辺りを照らす。
街頭が立ち並ぶが少々人通りの少ない道を、空穂は帰宅していた。
「はぁ⋯なんですかナンパって、私そんな魅力ありますかね?」
どうやら買い忘れた物を買いに行った帰りに一度ナンパに会い、イライラしているようだ。
そんなこんなで異能を使うのは少し面倒なのでゆっくり帰宅中。
少し疲れ気味に歩いていた時、突如背後から音が聞こえた。
『gau...』
振り返って確かめてみると、そこには虎型のエネミー。
「えっ」
こちらへ襲いかかってくる、少し焦りながらもいつも通り異能で逃げようとする。
だが一瞬、一瞬思考が停止したことで足がもつれる。
「やばっ⋯」
殺られる!そう思った矢先⋯
「その衝動は、飢餓?」
ピタ、と虎型の動きが止まる。
ただ行動を止めたのではない、まるで意図していないかのように虎型が驚いている。
だが、それでもなんとか目の前の獲物を逃さんとしている。
「その執念は、渇望?」
突如、虎型の体から汗が噴き出し、体が震える。
興奮ではない、畏怖でだ。
その異様な光景に、空穂が呆然としていると────
「過ちの果てに、絶望。」
消えた。
消えたのだ。
虎型のエネミーが、目の前で。
その代わりのように、少しズレた位置に金髪の青年が立っている。
優しげな目で、しかしなにか、なにか存在そのものに"違和感"を感じてしまう、そんな気配。
その青年がこちらを向く。
不思議と恐怖はない。だが、ただただ違和感は残り続ける。
「こんばんは、怪我はない?」
「あ、はい⋯」
先程聞こえたような声ではない。そうなのだが、どうにも不思議でならない。
この男はなぜここにいるのか、そして虎のエネミーはどこに行ったのか?
「それなら良かった、俺は八空と名乗っているよ。今はエネミー狩りをやってる。」
「私は⋯空穂と言います」
まだ落ち着いていないようだ、少し言葉が詰まりながらも名前を言う。
「うん、いい名前だね」
「⋯私はあまり好きじゃないですけどね、"空っぽ"なんて。」
「そう、でも俺はそうは思わないね」
「何故ですか?」
大分緊張も解けてきたようだ、落ち着いている。
「空穂にはね、空っていう意味もあるんだ。」
「そして空っぽってことは、君が自由にそれを染められるってことだよ。」
「そう、ですか⋯では、私はこれで。」
歯切れ悪く返事しつつも、お辞儀をして立ち去ろうとした時。
「あ、これあげるよ。」
黒く大きな、シンプルなデザインをした槍が差し出される。
「え⋯これは⋯?」
「そこのエネミーから落ちた異産、俺は使わないからさ。」
「はぁ⋯そうですか、ありがとうございます。」
(⋯やっぱり、少し違和感があります)
(異産というものは、そのエネミーの特徴に合ったものが出ると聞いていたんですが⋯)
「じゃ、気を付けて帰ってね。」
「⋯はい」
◇◇◇
そして後は特に何もなく家に帰ってきた空穂。
(やっぱり、なにかあの人には違和感が⋯って、あれ?)
(思い出せない⋯顔、八空さんの顔が⋯)
(なんで⋯いや、別に人の顔ぐらいは覚えなくてもいいんですかね?)
「まぁ、とりあえず寝ましょう。」
寝室へ向かい、思い返されるのは帰宅中の出来事。
「⋯私もやっぱり、いつまでもこうしてちゃいられないですよね」
私も、私もエネミーを、狩ろう。
そう胸に決め、ベッドへ眠るのだった⋯
【⋯ってね。】
─────────────────────メメタァァァァァァァ───────────────────────
・空穂さんのエネミー狩り決意のきっかけSSです
・次は蛍想兄妹旅行SSかな⋯其の二に出る予定ですね空穂さんは
・兄妹との本格的な絡みは他のSSで書きましょうか⋯
・一次創作っていいですね どんだけイチャギスさせてもいいし書いたことがすべて真実になる