「──なぁ、未来の俺。その……ねーちゃんと樹が最近無防備過ぎるんだけど、如何したらいいと思う?」
本当の事を言えば嫌いなコイツには相談はしたくなかった。
ねーちゃんと樹の2人を恋人にするなんて欲張りでふしだらな存在が未来の自分自身なんて認めたくはなかったし、未来のねーちゃんと樹が見た事も無い様な嬉しそうな顔をしてアイツに笑いかけているのが悔しかっただけなのかもしれない。
けれど日に日に俺の心を揺さぶる熱に踊らされて、何の覚悟もないまま大切な2人を傷付ける事だけは避けたかったから……。
だから、俺は高校生の俺へと尋ねたのだが──
「お前の言いたい事はつまり──風と樹をエッチな目で見ちまうって事か?」
「ゴホッゴホッ!! おまっ!? 何言ってッ!?」
相談を聞くならばと真剣な顔をしておいて、高校生の俺から飛び出した言葉はメチャクチャだった。
というよりただのスケベな発言だった。
「違わないだろ。この頃はもう風も樹も狙って無防備な姿を晒してくるようになるからなー」
「わざとなのか!?」
ねーちゃんと樹が自分からそんな事をしていたと知って、俺は動揺が隠せなかったが、確かに言われてみればそうだ。
義姉弟で一緒の家に住んでいるとはいえ、最近になって俺はエッチなハプニングに遇う事が多過ぎる。
風は家の中では首周りの広い服やミニスカでブラチラやパンチラを俺にしまくるし、樹は風呂上りに寝間着の下を穿かないまま俺の膝の間に甘える様に座ってくるのだ。
さらには俺の洗濯物の中に風と樹の下着が入っていることもたびたびある。
下着を返しに行く際の真っ赤になった顔のねーちゃんと樹には何度もクラっときたし、肌触りの良い薄い布切れのコレをねーちゃんと樹が……とイケナイ考えを何回もしそうになった事は誰にも言えない秘密だ。
「風はどんどんスタイルが良くなるし、樹は大胆な下着を着けてくるようになるしでどきまぎしてんだろ?」
「してねぇよ!」
「嘘つくなよ。……現に俺はそうだった。しかも、これからさらにハードルも上がるからな。下着姿の自撮りとか脱ぎたての下着も手渡してきたりとかな。……控えめに言ってもエロ過ぎてヤバいし堪らなかったぜ……」
「ぐっ!? 自慢して言うことじゃねぇだろそれは!!」
思わずねーちゃんと樹の下着姿を想像してしまう。
駄目だ、止めろ!
普段おかずに使っているものなんかよりも破壊力高いとか思うな!
確かにねーちゃんと樹の下着に興奮したけど、あれは2人が魅力的すぎるからで──あぁ、クソッ。
何考えてんだ俺は──
「っていうか何で2人はそんな事を……?」
「そんなの好きなお前に意識して欲しいからに決まってるだろ。あぁlikeじゃなくloveのほうな」
「────ッ!」
思わず言葉が出なかった。
ねーちゃんと樹が俺の事を好き?
頬が熱くなり、ドクンドクンと心臓の跳ねる音が早くなる──
2人が俺の事を男として好きだと聞いて嬉しく思ってしまう。
そうだ、俺も……違う、俺のこの想いはあくまで家族愛で、それに俺には──
「でも俺には──」
「2人まとめて幸せに出来る覚悟がないってか? じゃあお前は風と樹が他の奴とくっつくのを指を咥えて見てられるのか?」
「そんなの嫌に決まってる!! ──あっ!?」
反射的に俺は答えていた。
風と樹が幸せになるのなら、2人が好きになって選んだ男ならそれで良いと考えていたはずなのに。
俺以外の男と一緒になる2人を想像するのが、何故か堪らなく嫌だった。
あぁそうか、俺は……。
「ホントは風と樹が大好きで、誰よりも自分が2人を幸せにしたいんだろ? 別に欲張ったっていいじゃねぇか。それでみんな幸福になれるのなら……最高だろ」
「それは……そうだけど、でも──」
納得していいのか悩んで言い淀む俺の胸に、「トン」とアイツの拳が当てられる。
「もっと自分の事を信じろよ。お前の風と樹への愛情はちっぽけじゃねぇはずだろ? ──“その想い”は誰よりも俺が分かってる──」
「未来の俺──」
そうだ、俺はねーちゃんと樹が好きだ、大好きだ。
ずっと2人と一緒に居たい。
ずっと2人を笑顔にしたい。
ずっと、ずっと──
「“俺が”ねーちゃんと樹を幸せにする。絶対に。何があっても」
俺たち義姉弟たちだけになって、俺は2人の為に頑張ってきた。
俺と樹の母親代わりとして家事全般を受け持つねーちゃんの負担を少しでも和らげたかったから、必死で家事を覚えた。
一人になると暗い顔をして塞ぎ込むようになった樹を元気にしたくて、色んな話をしたり外へと連れだした。
ねーちゃんと樹の笑っている顔が好きだったから、2人が大好きで堪らなかったから──
当時勇者に成れなかった俺には出来ない事や力になれない事もあったけれど、それでも2人は俺が傍に居てくれて良かったと微笑んでくれた。
そんな2人の愛しい笑顔を俺はずっと守りたいんだ──
「良い顔になったじゃねぇか、でも一人で全部抱え込むなよ。風と樹と3人で幸せになりたいならちゃんと話しあって将来の事とかも決めるんだぜ」
「うっせぇ、分かってるよ。……でもサンキュ」
未来の俺のニヤニヤした表情なんて見たいわけもなく、顔を背けながらで礼を言う。
自分の想いに気付かせてくれたことには感謝はしている。
だから、せめてもの感謝として礼は告げるべきだろう。
その後も色々な事をアイツと話し合った。
話し合ったと言っても、大体は未来の俺たちはどうなのかを教えて貰ったのだが。
ねーちゃんが家事や部活やお役目に気を回し過ぎて下がった学力を取り戻すどころか学年上位になるまで勉強を頑張ってたり、樹がボーカル教室で学んだり舞台で歌ったりと歌手になる夢の為へのステップを順調に進んでいるなんかの事から、ねーちゃん達とは週に〇〇回もヤるくらいにほにゃほにゃが大好きだから頑張れだの、2人揃って穴開きやスケスケ下着なんかのエロい下着を身に纏って誘惑してきて理性が毎回飛ぶとか、2人の息の合ったご奉仕はとんでもなく気持ち良いとか、挿入時にはエッチなおねだりで先に入れて貰う順番を競うようになったとか、ねーちゃんも樹も中出しされるのが大好きで射精が終わるまでギュッと抱き着いてくるのが可愛いとか、お腹がポッコリ膨らむくらいまで出されて満足した2人の寝顔が愛しくて堪らないとか……だ。
途中からの内容に至っては顔を真っ赤にして相槌すら打てなかったのは地味に悔しかった。
結局、最後まで手玉に取られたみたいで面白くなかったから、せめてもの意趣返しになればと俺はアイツへと尋ねた。
「──なぁ、ちなみにアンタは何時自分の想いに気付いたんだ? ちゃんと自分で気付けたのか?」
「あー俺はなぁ……どこぞのヒーローが教えてくれたんだよ──」
そう言った未来の俺は懐かしむような笑顔で応えたのだった──
END